青魚(アオウオ)とは?


本格的な学術資料はあまりに少ない。釣り人の視点からの推測含めた基礎知識。


アオウオのプロフィール

コイ目 コイ科 ソウギョ亜科 アオウオ属  【学名】 Mylopharyngodon piceus

 【和名】アオウオ  【俗称】アオ、クロゴイ  

 【中国名】青魚(チンヒー、チンュイ) 【台湾名】烏鰡(ウレュウ)

  【英名】Black Carp(ブラックカープ)    その他各国での呼称

 アジア大陸東部原産。中国大陸より移入。ソウギョ、ハクレン、コクレンと共に、中国では「四大家魚」と称され、内水面の貴重な蛋白源として有志以前から養殖の歴史をもつ。
いずれも成長が早く3〜5年で1メートル程度に達するが、アオウオが最大で、最大で2メートル以上に達する。

*故郷の中国では2m、100kgをはるかに超える青魚の成長記録がある。
220cm 157kg 198cm 122kg (写真無し。いずれもChangjiang river 長江=揚子江にて)

*さいたま水族館にて。写真はクリックで拡大します。

美しい漆黒の巨体

鑑賞魚としても一級品

頭はやや尖る。

古代魚のような雰囲気

日本への移植と分布

 中国大陸からの四大家魚の移植は明治時代から各地に行われたが、国内では利根川水系だけで天然繁殖が確認されている。最大かつ決定的なのは第二次世界大戦中の1943年、戦時魚類増産対策といわれる。

1941年から1944年までにハクレンとソウギョの稚魚350万匹が中国大陸から運ばれ、国内二十数府県に放流されたが、唯一利根川水系だけで天然繁殖が確認された。(利根川水系には1943年に23600尾を放流といわれる)。このときの構成比はハクレン90%、ソウギョ10%、その際にアオウオ、コクレンが1%に見たぬごく少数で混じっていたといわれる。

これらの魚の卵は流下卵(受精後、ゆっくり流れながら孵化する)であり、揚子江といった大陸スケールの魚だけに、孵化までに36時間以上かかるだけの長い流程を必要とする。 そのため、中国大陸以外では産卵しないといわれていたが、利根川水系で天然繁殖が確認されており、千葉県関宿から分流し東京湾にそそぐ江戸川にも生息する。

中国大陸以外での天然繁殖は極めて異例なことである。台湾にはダム湖などに多く生息するが、すべて放流されたものである。

国内での生息数は?

  中国では四大家魚としてのアオウオは別に珍しいものではないが、日本国内では幻といわれる。

それは、たまたま1943年の戦時対策で日本に運ばれた350万匹の稚魚の構成比率が、今の日本国内の比率をほぼ規定しているからである。すなわち、ハクレン90%、ソウギョ10%に対し、コクレン・アオウオはいずれも0.1%に満たなかったとされるように、それ自体を目的として移植した魚ではないのだ。そのために、両者は幻の魚といわれて久しかったのである。

  アオウオに関しては利根川などで鯉釣りの仕掛けに時折針にかかって、釣り人を驚かせていたが、1990年前後からは釣法の研究により、狙えば稀に釣れる魚となった。その姿と巨体ゆえに一部マニアに熱狂的人気がある。

しかし、その個体数は決して多くはなく、親魚の生息数は利根川水系全体で1000匹〜1500匹程度という推定もあり、ハードルの高さは尋常ではない。

ただ、ここ10年で利根川・江戸川で合わせて年間300匹程度が釣り上げられた年もあり、少なくとも年間100匹近くは釣られていると思われるので、計算上はこれまでに、のべ1000匹以上が釣られたことになる。(ほとんどキャッチアンドリリースされ、再度あるいは数度針にかかるものがいるので実数ではないが、数匹に一匹には針にかかっている計算になる)

その意味でいえば本当の幻の魚はコクレンである。 

*以下は、埼玉水産試験場の研究報告等から数値データで推定したもの。産卵された卵ベースからなので推測の域を出ないが、魚種の比率などはひとつの目安となろう。(釣り師の感覚からいえば実際はもっと多いと思うが。)

データ1【利根川水系でのソウギョ類の親魚の推定数】 埼玉水試調査より
26万尾〜52万尾 調査:1991〜93年、産卵場である利根川栗橋町地先より下流12Kmの江戸川関宿こう門で採取した流下卵数から産卵場に集まる親魚の数を推定
出典:埼玉水産試験場研究報告53号(1995)
データ2【利根川水系でのソウギョ類の魚種構成比】 埼玉水試調査より
ハクレン 79.49% 調査:1989年、江戸川・野田での流下卵から孵化させた稚魚約5万匹を91日養成して観察
出典:埼玉水産試験場研究報告49号(1990)
ソウギョ 20.17%
アオウオ 0.28%
コクレン 0.06%
参考値 【利根川水系での各魚種の生息数】  
推定数 データ1とデータ2より青魚倶楽部が試算。
(データ1×データ2)

*ちなみに利根川水系全体の流域面積は1万6840平方キロ。生息域を度外視して単純計算するとアオウオは10平方キロに一匹以下。
ハクレン 206674尾〜413348尾
ソウギョ 52442〜104884尾
アオウオ 728〜1456尾
コクレン 156〜312尾

魚体の特徴


 形態はコイに似るが、ヒゲはない。頭部はコイより尖る。鯉と違って腹部は扁平で、うつ伏せに横たえることができる。口は下方に伸長し、水底にある餌を吸い込むのに適している。

コイに比べ青みかがっているのでこの名前があるらしいが、どちらかといえば黒みがかっていて、よく漆黒の巨体などと表現する。台湾ではその黒さが烏(カラス)のようだということで、「烏鰡」(OLiyu)の別名がある。

その風貌、体躯のバランスなど、南米や他の大陸の巨大魚にはない、鯉のぼりや水墨画に象徴される東洋的な風土や感覚にマッチする美しさをもっている。単なる大きさだけでなく、ここが釣り人の敬愛と憧れを増幅するのではと私は考えている。

黒目がちの円らな瞳(アシカとかアザラシのそれを彷彿させる。漫画のゴマちゃんをご想像いただきたい)と、黒く優美な大きなヒレ (三角の背ビレ、胸ビレ、尾ビレ)が、この魚の高貴なオリエンタルムードと神秘性を強調している。

食性は?

食性は雑食性だが動物性の嗜好が顕著。見えるところに歯はないが、強大な咽頭歯をもち、特に貝類、甲殻類を好んで摂取するといわれる釣りの餌としてはタニシ、カラス貝などがもっぱら主流。

その習性は?

習性は未知の部分が多いが、単独ではなく数匹の群れで、餌の多い岩盤や石積みや障害物の周囲の下層を主として棲息すると思われる。

ときおり、イルカのようにゆっくりと水面に現れ、背ビレ、そして尾ビレをメラメラとさせて潜っていく行動をとることがあり、その大きさゆえに巨大な怪魚!などとウワサになったりするのはここからくる。釣り人はこの行動を見てその日のコンディションを判断する。

産卵期は遡上

産卵は6月〜7月、利根川中流の埼玉県/栗橋市付近まで遡上して行われ、その後はまた下流に戻る。そのまま利根川に降りるものと、江戸川へ下るものがあり、年によって異なっているらしい。

産卵の誘因となるのは、20度以上の水温、濁り、流量が必要とされ、レンギョ、ソウギョともこの時期などとも一致しているものと思われる
                   *ハクレンの産卵期の速報は栗橋町観光協会を参照

どのくらいの大きさになるか?

利根川、江戸川で釣れるのは、小さなものでも1メートルを超え、平均で120〜130センチ前後が多いが、釣り人の間では140センチを超えて初めて大型と呼ばれる。

中国では2メートルのものもいるといわれ、国内でも180センチ級が上げられたなどの情報もあるが、釣りの対象として雑誌などで確認されている最大は利根川で2000年5月に上がった167cm。

大阪の「釣りサンデー」誌では164cmを日本記録としている。

160cm以上の記録は、利根川・江戸川を合わせても、ここ10年ほどでわずかに10匹程度と思われ、非常に希少。釣り師のひとつの到達目標のボーダーラインである。

いずれにしても国内の淡水魚では最大級である。 

幼魚が釣れない不思議

逆に不思議なのは、利根川水系の本流で釣れるのは、小さなものでも1メートル前後はあり、最小でも90センチを切るものは非常に稀である。(私の最小記録は110cm)

また、フナ釣りなどで小型が釣り上げられたという話も聞かれない。

いくら成長が早いとはいえ、誕生後1年ではせいぜい50〜70cm程度と思われる。天然繁殖しているとすれば、このサイズの幼魚が釣れないのは大きな謎である。

釣り人の間では、1〜2年の幼魚は穏やかな水郷方面、例えば北浦などで過ごすのではと、いう仮説があるが、未検証。

重さの推定法

全長のみをはかるキャッチアンドリリースの釣りが一般的で、体重の測定は、その大きさゆえにヘルスメーターなどがない限り釣りの現場では無理で、多くは推定としている。しかし、いくつかの測定例から総合してみると、経験的な公式が導ける。

すなわち、120センチ以上の魚の場合、体重(kg)=(全長(cm)−100)×0.9。

150センチなら45キロという具合である。もちろん人間同様、個体差はあるが、ひとつの標準体の目安となろう。
                                               

日本最大記録更新?

2001年夏、利根川長豊橋にて、170センチオーバーの青魚が釣り上げられた。 状況に残念な部分があることや、雑誌や団体の公認ではないが、ここ10年ほどの歴史ではほぼ最大級に近いと思われる。 参考記録として認識したい。

全長:約170cm
日時:2001年7月12日 AM4:20
場所:利根川長豊橋上手

 今夏、アオウオファンを熱くさせた噂のご本人にお話を伺った。
 二人で釣行し、家の所用で釣場をはなれたときにアタリがあったため、竿の持ち主と実際に釣り上げた人が別という事情。しかも、どちらも池田さんである。
 竿の持ち主は池田岩男さん(千葉県下総町)、写真にうつっているのは実際に釣り上げた埼玉大宮の池田さん。
 状況が状況だったため、計測版の当て方が不充分で、角度によっては172cm前後あるのではと思われるが、正確な数字をとっていないこと、またフィルムの状況が悪く、写真もこれしかないところにますます残念な部分が残るが、確実な170cmオーバーの貴重な記録だ。
   (写真提供:池田岩男氏/ミングウェイ山本氏)

中国四大家魚をもっと知るには

学問上の分類はいずれもコイ科の近似種です。

青魚倶楽部ではそれぞれの魚種の生態や釣り方を紹介しています。

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