台湾釣行記〜北緯24度、日月潭を釣る


2001年9月9日〜14日、夫婦で二度目の台湾旅行をした。
日本から釣具を持参、中部の山上湖「日月潭」に2泊してアオウオ、コクレンを狙った。
結果はあいにくだったが、とにかく、台湾での竿出しを実現できたのは貴重だ。

*写真はすべてクリックで大きく見られます。


その結果は・・・

沖縄久米島付近を迷走停滞した台風16号が心配だったが、台湾は幸い天気にはめぐまれ、予定どおり、11日にまる一日と、10日の夕方、12日の朝と竿を出すことができた。しかし、結果は厳しいもので、雑魚と鯉ッ子が数匹という結果。

山上湖「日月潭」のコンディションは、あいにく8月に直撃した台風の影響でのにごりが残っているのと、数日前からの冷え込みで、食い渋りという状況であった。

日月潭(にちげつたん)とは?

日月潭。発音はズィーユエタンもしくはリーユエタン。英名「SUN MOON LAKE」。かつて清朝の将軍が、「北側は日輪の如し、南側は月輪の如し」と語ったことに由来する、台湾屈指の観光地。

北緯24度、東経121度、台湾本島のほぼ中心に位置する。海抜748m。周囲は2000メートル級の山にかこまれ、エメラルドグリーンの湖水に霧が立ちこめる朝夕は特に幻想的。

周囲24キロ、面積11.7km、最大水深30メートルという台湾最大の湖。日本の関東でいえば、箱根の芦ノ湖といったところか。

1999年の台湾大地震の震源地はこの近辺であり、ホテルなど大打撃をうけた。現在は急速に復興中だがその傷跡は各所に残る。

台中市から東へ50キロ、クルマで約2時間。(ふもとの埔里(プーリー)という町までバスかタクシー。)国際空港のある台北からはバスで5時間程度かかる。

日月潭地図
入り組んだ湖岸
日月潭の夕日絶景の夕日 日月潭湖畔にて
湖畔にて

今回は釣り未亡人の妻との旅行なので、このリゾート地を選定。埔里(プーリー)に住む「リリイさん」という女性に個人ガイドをしてもらった。大変親切な方で、私が釣りしている間、妻をいろいろ案内してくれた。

ホテル桟橋にて
ホテルの
プライベート桟橋にて
日月潭の釣り筏
ホテルを臨んで釣り。
(中央の黒っぽい建物)

ホテルは5つ星のリゾートホテル「哲園名流会館」。レイクビューの部屋で快適に過ごすことができた。

国際VIPも泊まるというロッジ風のこのホテルは湖際にあり、テラスからの釣りも可能だ。ヨットやクルーザーの発着できる自家桟橋もあってほんとにゴージャス。私が釣りをしたのはこのホテルから目の前の筏。渡船もこのホテルの従業員がしてくれる。

市場でエサのタニシを確保

ふもとにある埔里の町で、市場に行き、タニシ10kgを購入(約1700円)。これは食用として売られていて、日本のカワタニシとほぼ同様のもの。雷魚、ウナギ、カエル、その他いろいろなものを売っていて楽しい。

市場のタニシ
タニシは食用。
キロあたり50元(=170円)
市場のライギョ
雷魚(台湾ドジョウ)市場の鶏
カエルもある。
市場の鶏
足つきの鶏もある!

タニシ
台湾のタニシ。
美味しいらしいが・・
タニシを撒く
夕方、ポイントへ行き、
タニシ撒きする。

湖への到着はすでに午後3時。翌日の朝の釣りに備えて、夕方、渡船してもらい、タニシを撒く。ついでに2時間ほど釣りをしてみる。

エメラルドグリーンの湖水は白っぽい濁りが入っていて透明度は1メートル程度しかない。筏から竿下の水深をはかると竿2本分よりも深く12〜13メートル。思ったより深く、不安になるが、ほどなく黄昏時を迎え、すばらしい絶景に感激する。

船屋(筏)での釣り

この湖では、岸から釣れる場所はほとんどなく、いたるとこに日月潭風景管理所が管理する有料釣り筏があり、それを利用する。「船屋」といい、皆、プレハブのような小屋がついている。無人だが、キーつきで、トイレ、電気照明、ガスボンベという設備があって、泊まりも可能であるし、屋根があって雨でも大丈夫。豪華なものには湯沸し機、冷蔵庫やテレビ、ベッドまでがついているという。個々の船屋は完全に独立していて、ちょうど磯の離れ小島のような気分を味わえる貸し切りプライベート空間である。広さは50uくらいが標準のようだ。

私の乗ったところは、かなり老朽化していた安いところで、一日500元(=1700円)
ここに、手漕ぎボートに毛の生えた程度の渡船で渡してもらう渡船料金が500元。

平日なので釣り人は少ないものの、近所の船屋にぽつりぽつりと地元釣師の姿。ほとんどがアオウオ狙いという。

目からウロコ。地元アオウオ名人と釣る。

オジサンこれがオジサン オジサンを真似て
私も真似して!

朝の短時間だが、同じ筏で地元の老アオ師と釣りをした。ほんとに片言だが日本語が多少わかる。(名前がわからないので以下オジサンと呼ぶ。台湾では日本語の名残で、中高年に呼びかける際、本当にオジサン、オバサンという。失礼な言葉ではない)

オジサンは網でエビなど漁をしている漁師で、自分のボートを持っていて毎日朝5時から2時間だけアオウオ釣りをするとのこと。

しかも、食べるためではなく、純粋に遊びの釣り。重さだけ計ってリリース。だいたい一日一本で、年間300匹釣る!という名人。平均は20キロくらいだが、その人の最大は5尺、32kgとのこと。エサはこの筏から毎日乾燥コーンを袋で撒いていて、今年はかれこれ200キロ撒いたという。

最初はいぶかしそうだったが、コミュニケーション用に持参した江戸川のアオウオやソウギョ、レンギョの写真を見せると、表情が和らいで微笑んでくれた。ひとりで大竿を出している怪しい日本人のニイチャンを同類とみなしてくれたようで、うれしかった。160センチ級の写真にも、さして動じることもなく、しかもこの湖には100キロ級のもいると、うれしいことをおっしゃる。この人、筋金入りのアオウオ釣師だ。

その釣り方は日本のアオウオ釣りの既成概念と違い、チヌの筏釣りが一番イメージに近い感じ。おそろしく繊細なものであった。

2mくらいの振出竿にスピニングをつけて、仕掛けは道糸6号にナツメオモリの8号くらいを直接通して、ヨリモドシをつけて針は一本針(ハリスは5号30センチほど。針はチヌ針の大きなもの。)とシンプルの極み。

これをワカサギ釣りのように5本ほど30cm間隔でならべ(水平にして板の間に置くだけ)、竿下にするすると仕掛けをおとしこみ、アタリは竿先を5cm押さえ込む程度を合わせる釣り。今は水温が下がっているので、アタリは竿先が「一寸」くらい入るだけ、それを間髪いれず合わせるのだという。

センサーをセットして、寝ていても向こう合わせで釣れるという釣りとは180度違う世界に、私はただ驚くばかりであった。

その手さばき、飄々としたたたずまいが釣り仙人風なこのオジサン、リールも仕掛けもつけたまま、竿を伸ばす・たたむだけで、セッティングも撤収もわずか3分とスピーディ。7時になると仕掛けた網を上げるといって、竿とコーンの袋を持って自分のボートに乗りこんで行ってしまった。

現地スタイル
現地スタイルを
真似してみるが・・
陳さん
渡船してくれた陳さん。
泊まったホテルの従業員。

オジサンは帰り際にコーンをくれたので、私は「オイシイよ」と手振りをしながら、残りのタニシを網ごと彼にあげた。再見!

彼が帰ったあとは、持参したワイヤー付き太仕掛けを仕舞い、ナイロン5号に伊勢尼の針を結び、釣法もふくめてさっそく真似をしてみるが、ゴツイ道具では厳しいものがある。竿間隔を30cmほどに水平にならべてみる。

大きな魚が寄ってくると、糸ズレがオルゴールのように各竿に伝わ、ほんのちょっと「ちょん」というアタリがくるのだが、瞬間的な合わせがなかなかできない。

ここでは、タニシよりもコーンがいいとされる。

コーン
コーンの比較

今回タニシを用意したが、このポイントにかぎってはコーンがいいそうだ。理由をきいてみると、このポイントの湖底にはたくさんの小さな二枚貝がびっしりいて、それを腹いっぱい食しているので、魚にしてみればタニシは魅力がないということのようだ。しかも、このオジサンは毎朝約1キロの乾燥コーンをこのポイント1点にいれてある種、飼い付け状態にしているという。
付けエサは乾燥コーンの大粒のものを、酒とバニラエッセンスで戻したもの。
オジサンのものを分けてもらったが、大きく堅くてしっかりしている。これを2粒、針がけする。

写真左が釣り具店で購入した缶詰のコーン、右がオジサンのコーン。市販のボイルものは柔らかすぎてエサ持ちがわるいが、確かにしっかりしたエサで、打ち返しても落ちる事はなかった。

アオウオは確かにたくさんいる。

ウロコ
スレで来た青魚のウロコ

この湖でアオウオの跳ねと抜けはかなり確認できた。平均するとさほど大型ではないが、黒い尾びれがぬっと出てバシャッと湖面をたたく。コイの跳ねはほとんどみえず、確認したのはすべてアオウオ。湖面が静かなので、波紋が筏まで伝わってくる。竿の真下でも二度ほど抜けた。

このポイントでオジサンは13日の未明には15kgのアオウオを釣ったとのこと。私も気合をいれて小さなアタリを合わせて、一度は針に乗せたが、あえなくバラシ。スレで青黒いウロコがついてきただけ。大きさから察するとメーターを切る小型と思われる。しかし、あと釣れてくるのは鯉ッ子だけ・・

コクレンはどうか?

この湖にはコクレンは多いが、この夏の時期は釣れないといわれた。言葉の関係で正確な理由はわからなかったが、11月12月がいいとのことで、とにかくオフシーズンとのこと。が、ここまできたのだから強引に日本式の遊動ウキでやってみることにする。

タックルは磯竿3号にアブ6500C、道糸6号、ハリス5号の2本針の孔雀遊動ウキ仕掛け。(針は江戸川のハクレン釣りに愛用している「ダム専用へらサイト18号」というスレ針。これにエサ脱落防止用スプリングを通す)

エサは現地釣り具店で購入したコクレン専用の袋モノ。マッシュというよりは米糠ベースだろうか、また、エビ粉のような動物質のものも入っている。バニラの香がする。

タナ取りして水深をはかると13メートルのほぼフラット。底には枯れ枝などが積もっている感じ。

4メートルほどの中層で打ち返しをつづけると、次第にせわしいアタリが出始め小魚(名称不明。ハヤとオイカワを合わせたような魚)がびっしり寄ってしまい、目玉や腹にスレでかかってくる。タナを一気に12メートルの下層に合わせると、消しこみのアタリがで20〜30cmのパンパンに太った鯉ッ子ばかりが入れ食いという状況となってしまった。コーンの撒き餌のせいもあるのだろうが、とにかく魚は多い。

さすがに辟易したので、「覇王針」という現地の仕掛けもやってみたが、やはり雑魚が引っかかってしまい、コクレンのコの字もなく断念。いまひとつ消化不良のまま終わる。

遊動ウキ仕掛け
遊動ウキ仕掛け
コイっ子
ウキ釣りでコイッ子。
コイっ子
コイッ子はコーンにも。

最後に


ここは素晴らしい湖だ。アクセスは大変だがとても気に入った。
夏のほんの一日の釣りであったこと、また高地の山上湖という特殊な条件。芦ノ湖と北浦の鯉釣りが違うように、これで台湾の青魚釣りがどうだこうだという結論はとても出したくない。平地の野池や河川、急峻なダム湖とも違う釣り環境だから。

ま、とにかく竿をだせたことと、状況は十分に把握できた。百聞は一見に如かずという言葉どおり、文献では得られないいい体験をした。また、この釣行に関してはインターネットで知り合った、現地在住の方に個人的にお世話になったことも大変貴重な体験となった。

小さな1歩だが、これは日本の淡水大魚ファンにとっての大きなステップだとも考えたい。

私には昨年来ハマッている小笠原のイシダイと並ぶ、あらたなチャレンジ目標がまた増えた。遠征は、もっぱら日常化、ルーティン化している私の釣りに夢と刺激を与えてくれる。日月潭。時期をみてぜひ一年以内にリトライしようと思う。

日月潭については公式ホームページを参照。


*私が台湾でのんびり釣りをしていたこの2001年9月11日、米国へのテロ攻撃がありました。台湾の衛星放送で見たNYの映像は大ショックでした。幸い空港もさほど混乱なく帰国できましたが、犠牲者ならびに関係者の方々には慎んで哀悼の意を申し上げます。


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