名著「淡水大魚釣り」賛歌


〜青魚倶楽部は、心の師・小西さんへのオマージュでありたい、と思う。〜


 私の釣りの原点は、なんといっても第一人者、小西茂木さんの影響が大きい。

私が生まれた昭和40年代初頭に著わされた「淡水大魚釣り」はレンギョ・ソウギョ類の生態や食性の研究と釣技理論が結集された不朽の名著である。その流麗な文章と大魚のドラマに魅了され淡水大魚のとりこになった方も多いと思う。

 もちろん私もそのひとりである。まだ幼い日にこの本に偶然出会うことがなかったら、今私がこのような釣りをすることはなかったろう。偶然ながらそのお名前にも親近感を感じる。

 まったくの手探りの中からひとつのジャンルを創造するというのは生半可なことではない。狂気だけでも理性だけでも成り立たず、不屈の志と情熱を持ちつづけることだと思う。

 私はお会いすることはできなかったが、氏は心の師であり、本書は永遠のバイブルである。
昭和の偉大な巨星に敬意を表してこの本の印象的なエッセンスを紹介したい。

(赤文字は私の主観で選んだ原文の一部抜粋。写真はすべてクリックすると大きくみられます。)


著者:小西茂木(こにし しげき)

児童文学作家。1908年生まれ。昭和26年、自宅近くの荒川笹目橋でレンギョに出会う。以後一貫して、レンギョ・ソウギョなどの習性生態の研究と独自の釣技開発を重ね、ドキュメントをで釣りマスコミに発表。「淡水大魚釣り 全」(東京書店昭和43年。絶版)を筆頭に「野ゴイ釣り」「ソウギョレンギョ野ゴイリール釣り」など著わす。「淡水大魚研究会」創設者。平成4年春に永眠された。

ポイント1.空前絶後。淡水大魚=新カテゴリーへの啓蒙書。







表紙 著者 印象的な挿絵 江戸川下流
ソウギョ レンギョ

戦後の新しいレジャー時代とシンクロさせて、淡水大魚という新顔の到来を高らかに謳い上げた。文筆家ならではのファンタジックなストーリーも織り交ぜた流麗な文章と大魚たちとの数々の記録に読者は思わず引きこまれ、魅了された。旧態依然とした価値観や新顔への偏見が支配する時代に、新ジャンル確立への強固な決意と情熱がほとばしる。









ポイント2.唯一無比。小西式という超高等釣技理論書

たまたま釣れる魚から「寄せて」釣る近代的な釣りへ。まったくゼロからの試行錯誤と、専門研究機関の協力と独自のフィールドリサーチによる実証的なアプローチで、独自の釣技を数多く開発された。ここでは多くを紹介しきれず、またそのまま実践するにはいささかハイブローな部分もあるが、その根底は30数年を経てもなお決して色あせず、とにかく参考になるものばかりである。この著は永遠のバイブルなのである。


音響誘魚法

投入姿勢

Y字ハリス

遊動ウキ

大物結び

オモリ救出装置

針の理論

ソウギョの食場

レンギョの就餌








ポイント3.夢の超大物。幻のアオウオ、コクレンの神秘

本書でも、アオウオ、コクレンはやはり幻、夢の大物。

本人の目撃談、東京釣仙郷での島根政吉さんのエピソードは、アオウオ特有の習性を見事に描写したドキュメント物語。神秘的なアオウオの原体験イメージが私の心に強烈に形成され、リリースする度にこの話を思い出す。

コクレンの情報は、北浦・宇崎で網にはいった五十キロの写真のみ。私にとってコクレンは、まさしくこの写真のイメージであり、いつかは隣に寝そべってみたい憧れの存在。


アオウオ

礼をいいにきた青魚

幻のコクレン




(以下、はえなわ漁師の会話の回想をおりまぜた、荒川道満河岸の乱杭での筆者のアオウオ目撃談。)






(「礼をいいにきたアオウオ」に続く。真冬の東京釣仙郷水元公園。リリースしたアオウオが数日後、おなじ舟のところに現れた話)









ポイント4.魚と自然、そして理想の未来

この本が単なる実用書でないのは、大魚への比類なき愛情物語の文学であり、同時に自然環境について考えさせる側面が大きいこと。特に、荒川をホームグランドとした氏は高度成長時代の荒川下流部の汚染や、秋が瀬堰、武蔵水路の完成、利根大堰とさまざまな開発の影響を案じる。また、将来のメジャー化という大きな夢。人工種苗の発展で全国でこの大魚たちでいっぱいになることを希求。







   (目次)
               第一章  生態と習性
                  大魚釣りへ招待
                    ソウギョにとりつかれて  釣り技の開発  生息数の比率  
                    各地の大型記録  淡水魚最大の標本
                  魚族の王
                    天然種と養殖種のコイ  庭の池のコイ
                  側線うろこ     
                    鋭敏な感覚
                  音響誘魚法 
                    鳥寄せ、魚寄せ  水産庁の実験  魚は「あまい音」に寄る
                    幸運な竿
                  口、歯、寿命
                    ハリにかかりやすい口、かかりにくい口  かたくて丈夫な歯
                    かみきられた5号ハリス  ソウギョの歯の特徴  長くはない寿命
                  春から冬への釣り期
                    淡水大魚釣りのはじまり  必要なPR  産卵期の移動  産卵後の
                    弱いアタリ  秋の好機
                  釣技エッセイ
                    笹目橋  名を忘れられたレンギョ  「怪魚」砂船をおそう  引き倒され
                    た竿  老釣り師の執念  黒く光る巨体  礼をいいにきたアオウオ
                第二章  釣り具・釣りエサ
                  必要な用具
                  レンギョ竿
                    竿選びの苦心  適当な長さ  投げ竿の改造  深場用ヘラ竿と
                    バカ取り  レンギョ用ウキ釣り竿
                  リールその他
                    サーフ・リールの効用  レンギョウキを作る  竿受け、竿掛けの任務
                    便利な手がき  救出装置つきのオモリ  ハリを検討する
                  シカケ作り
                    ウキ釣りシカケの要点  脈釣りシカケの要点  Y字型ハリスの研究
                  大物結び三種
                    ミチイトとミチイト  ハリとハリス  ヨリモドシの結び方
                   釣りエサの研究
                    代用品  配合ネリエサ  溶ける速度とやわらかさ  生きエサ
                    集魚効果
                 第三章  釣り技・釣り場
                   大魚釣りの四季  
                     野ゴイ  レンギョ
                   釣り場、ポイントの選定
                     各地にある釣り場  ポイントの実例  川のカーブは大型魚のつき場
                     流速毎秒1メートル  引きずりあげた「ポイント」
                   釣り技の研究
                     釣り方とシカケの使いわけ  ウキ釣りの要点  脈釣りの要点  野ゴイの
                     アタリ  エサだんごの集中攻撃  ソウギョの草バリシカケ
                   釣り場案内
                     江戸川  利根川  霞ヶ浦・北浦  荒川  池沼の釣り場  ダム湖その他
                     民営釣り場
                  第四章  資料
                    愛の祭典  産卵場の概況と産卵状況  おびやかされる唯一の産卵場
                    移植の沿革と種苗生産  標識魚放流  観賞魚の新顔・レンギョ
                    養殖池と釣り堀  西湖(中国)のソウギョ釣り  珍味・レンギョ料理の話


「淡水大魚釣り」について、Dukeさんのホームページ「Duke Box」のコイのページに紹介されています。ぜひあわせてご覧ください。


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